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処方薬嗜癖治療の方針
次を患者に伝える。
「この治療法開始前の屯用薬は、全て定時薬に加える。」
「新たな屯用薬は全て偽薬にする。」
「屯用偽薬に症状を改善する薬理作用はない」
「しかし、服用すると症状は改善する」
要求に対して偽薬を円滑に投与する。 -
屯用偽薬服用の効果
・全ての反射回路を完了するので、思考と摩擦する反射回路が残らず、苦しくない
・最終動作まで完了し、報酬は獲得できない
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屯用偽薬を用いた渇望抑制の短期的・長期的機序
1)短期的:苦しくない
行動完了のため思考と第一信号系に摩擦なし
2)長期的:欲求が生じなくなる
無報酬で条件反射の連鎖作動を反復するので、連鎖が作動しなくなる -
入院当初 定時処方
定時 リスペリドン (3) 4T / リスペリドン (2) 1T / アキネトン 11T クロルプロマジン(100) 2T / クロルプロマジン(50) 3T ピレチア(25) 2T / ホリゾン(5) 5T / ベンザリン(10) 2T
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入院当初 屯用薬
(3) クロルプロマジン(100) 1T
ベンザリン(10) 2T
ピレチア(25) 1T 1×不眠時
(4) クロルプロマジン(100) 1T
ホリゾン(5) 2T
ピレチア(25) 1T 1×不安焦燥時
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退院時処方内容
クロルプロマジン(100) 1T
クロルプロマジン(25) 1T
ピレチア(25) 1T 1×寝る前
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多剤乱用者に対する内容を告知した偽薬を用いた治療例
入院第8日目から屯用薬は偽薬
不眠時:1晩1回まで
不安時:間隔は2時間以上
ムズムズ時:間隔は2時間以上
偽薬:ビタミン剤、整腸剤、肝庇護剤
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屯用偽薬の効果の確認
医師「この1週間ほど、毎日不眠時薬をのんでますけど、偽薬効くでしょう。」
患者「えっ、偽物だったんですか。」
医師「最初に説明していたでしょう。」
患者「そう言えば、そうですね。」
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屯用偽薬の効果の再確認
医師「最近、まだ、毎日不眠時薬をのんでますけど、偽薬効くでしょう。」
患者「えっ、偽物だったんですか。」
医師「この前も、説明していたでしょう。
もう1回、しっかり・・・。わかりました。
あなたは私が嘘をついていたと思っていたんでしょう。」
患者「・・・・ええ、そうです。」
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対象患者による言葉での反応
「偽薬と言われたけど、効くので、本物だと思っていました。」
→行動完了による動作強制終了
「あまり欲しくなくなってきました。」
→条件反射の作動性の抑制
「自分は依存していたんですね。」
→行動決定において優勢になった思考
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対象患者による服用回数の変遷
全種類の屯用偽薬の服用回数合計を5日毎にカウント
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偽薬服用回数(5日毎)の変遷
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まとめ
抗不安薬、睡眠導入剤等の服用を執拗に望む患者に対して条件反射抑制療法を、内容を告知して屯用薬を偽薬にすることで対応した。
患者は、屯用偽薬に効果を感じ、自らが「依存」していることを理解し、定時薬減量もほぼ円滑に受け入れ、屯用薬服用回数も極端に減少した。処方薬への条件付けは治癒した。